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2015年05月31日
学会レポート 日本抗加齢医学会総会
日本抗加齢医学会総会レポート 抗加齢医学会専門医 小石剛
平成２７年５月２９〜３１日 福岡国際会議場にて 開催
以下は私、小石剛が受講し興味深かった点をまとめたものです。
１：腸内細菌について〜健康は腸内細菌が鍵を握っている〜
・腸内環境の動的保全と抗加齢医学 伊藤裕先生 慶応大内科
・ヒト腸内細菌代謝機能データベースの構築 山田拓司先生 東京工業大
・腸内細菌による免疫モデュレーション 本田賢也 慶応大細菌学
・メタボロゲノミクスによる腸内エコシステムの機能理解 福田真じ先生 慶応大生命研究所
人体には１００兆個以上１０００種類以上の腸内細菌が存在し、合わせると１〜２�圓砲發覆襦Ｄ夏盧拔櫃砲録佑砲箸辰突諭垢瞥�益な働きをすることが知れれるようになってきた。腸内細菌の種類の割合は人によって様々で、個人に合わせて千差万別であり、まるで指紋のように個人特定に使える可能性もあるほど。腸内細菌は母親に似、食生活習慣に大きく影響される。
また、同じものを同じだけ食べてもすぐに太る人と太りにくい人がいるのは腸内細菌が原因とも考えられる。実際に太っている人に痩せている人の便を腸に移植する手術が存在しその結果痩せやすくなるという。
さらに、規則正しく食べる方が太りにくいのは、人の生活リズムに腸内細菌が影響されるためであり、規則正しい生活は腸内細菌の状態を良くすると考えられるという。
口の細菌は唾液によって腸管に運ばれていく。そのため腸内細菌を良い状態に保つには口腔内の環境を良くしていく必要が考えられる。歯周病菌などが腸内細菌を悪化する可能性がある。
加齢によっても腸内細菌は変化していく。それは他の臓器の代謝の低下による腸内細菌の住む環境やエサとなるものの変化によるものかもしれない。
腸内細菌と人は共存共栄の関係にあり、それは自然農に似ている。植物は土の中の微生物を利用して養分を作り育つ。腸内細菌を改善するには発酵食品とゴボウや玉ねぎ、ニンニク、アスパラガス、大豆といった食物繊維が豊富でとくに根野菜を食べると良い。
２、アンチエイジング的食べ方のポイント
・ アンチエイジング医学に基づく「食」と「サプリメント」 坪田一男 慶応大眼科
・ 養生訓の要点（貝原益軒の時代と現代的解釈） 原 寛先生 原土井病院
＜別紙プリント＞
アンチエイジングの基本は“養生訓”でも説かれているように、食・生活習慣の養生であり、特に食生活に目を向け指導や啓発、そして実践を行うことが大切である。まさに＜食育＞はアンチエイジングの最重要ポイントであることがサイエンス（科学）によってもますます証明され推奨されるようになってきた！
３、長く生きるための口腔ケアと、口腔機能
・ 口腔の清浄性を高めるためのオーラルマネジメント 岸本裕充先生 兵庫医科大口腔外科
・ 唾液腺の機能を理解したわかりやすい口腔ケア 坂井丘芳先生 阪大顎治
・ 回復期リハビリテーションで行うオーラルマネジメントからのアンチエイジング 糸田昌隆先生 わかくさ竜間リハビリテーション病院
・ 発声障害に対する積極的介入 角田晃一先生 東京医療センター感覚器
・ 歌唱から始める口腔機能の維持と心身の健康 斎藤一郎先生 鶴見大病理
口腔内には非常の多くの細菌が存在し、歯に付着する歯垢１g中には１０の１１乗もの細菌が存在しその数はウンチよりも多い（糞便の細菌数は１g中１０の１０−１１乗）。
口腔の状態は、口腔のバイタルサインとしてクリーン＆モイスト（清浄＆保湿）を診る。口腔内の保湿＝加湿＋保湿である。加湿に影響するものは、摂食・摂水・咀嚼・脱水・服薬などである。保湿に関係があるものは、口呼吸などである。
口腔乾燥には保湿スプレーが有効である。保湿ジェルは薄く塗ること。厚く塗るとそのものが水分を吸水してしまうことがある。また過剰なうがいは、手荒れ時に過剰に手洗いするのがよくないのと同じく、逆効果である。
舌苔は、摂食が衰えることで舌の表面の乳頭が絨毯のごとく長く伸びたことによって白く見えたもの。その乳頭の間には細菌がたくさんいるが目には見えない。乳頭を傷つけないように優しくケアすること。
噛むことは、高齢になるほど脳に刺激となる。また口から食べることは“運動”であり、寿命を延ばすことにもつながると考えられる（毎日ごく軽度の運動を１５分以上つづけることが直接的に寿命を延ばすという研究がある）。
食べ物を誤嚥しないためには咽頭部で声門がしっかりと閉じる必要がある。簡単な発声練習で機能の維持をすることができる。
人は発声を得た代わりに咽頭部が喉の奥・首の真ん中あたりまで下がってしまった。そのため嚥下のたびに咽頭部を引き上げる必要がある。老化によってその力が失われてしまう。動物では咽頭部は首の上の方または口の中にある。そのため誤嚥する心配はない。
老化によって誤嚥しやすくなった場合、顎を引いたうつ向きで食べると誤嚥しにくくなる。
高齢者のみならず、健康を維持していくためには“咀嚼する”、“飲み込む”力が必要である。しかし加齢に伴ってそれらに加え“吐き出す”といった口腔機能が弱まり誤嚥が起こり肺炎も引き起こすことが知られている。
口の機能を保つことから全身の健康増進につなげるには楽しく取り組む必要性がある。そこで音楽健康指導士がカラオケと手の運動などを混ぜて楽しいエクササイズでアンチエイジングに取り組んでいる事例がある。
＜まとめ＞
アンチエイジング医学も、これまで食育で言われてきたことを推奨し始めている。和食に始まり、食べ方についても、腸内細菌の状態に影響するなど科学的に証明されてきているということである。
食は健康の原点であり、もちろんアンチエイジングにも、お口の健康にも直接的に関わっている。
また“食べるためには健康な口が必要”である。しっかり口で食べられることは健康維持に欠かせない。
私たち歯科の役割はアンチエイジングにとても貢献できるということを再認識した。
これからも、食を指導の原点とし、口の健康維持増進から“ごきげん”な人生をサポートしたい。
